男性ホルモンの分泌を促す、下半身リンパマッサージ

男性編

男の精力・性欲をアップする、医学的マッサージ

●男性ホルモンの分泌を促す、下半身リンパマッサージ

2章でED(勃起不全)は、性機能の減退ばかりでなく、「全身の血流の悪化が原因でも起こる」ということを述べました。
血流悪化の原因は、食生活、運動不足、長時間の緊張(ストレス)状態の持続、冷えなどいろいろありますが、手軽にできる改善策としては血管に「外的刺激を与える」方法があります。

運動も、血流を良くする「外的刺激」の一つですが、よりダイレクトに血管に圧力を加える「マッサージ」という方法もあります。
造精機能を担う下半身を中心に、正しく医学的なマッサージを行なうことで、男性ホルモンの分泌をアップしていきましょう。

自分でやるのも構いませんが、男性機能アップ効果を狙うなら、パートナーにやってもらうのことをお勧めします。
男性機能のアップには、女性に触れてもらうこと、リラックスすることも大切な要素。
信頼できるパートナーに体をケアしてもらうのは、まさに理想的なのです。

実践に際して、まず注意して欲しいのは力加減です。
マッサージといっても、肩や首を揉むようなイメージで力を入れてはいけません。
Vゾーンや下腹部などは、皮膚もやわらかく、大切な内臓がおさまっている敏感な部位です。
さするように、やさしく刺激していきましょう。

最初、血管に圧力を加えるという形で説明しましたが、実際のマッサージはリンパの流れに沿って刺激していくのが効果的です。
「リンパ」とは、内臓や皮膚をはじめ、体中に網目のように張り巡らされている管のこと。
このリンパ管の中にはリンパ液が流れており、血管を通じて取り込まれなかった不要なたんぱく質や脂肪、水分などの老廃物を運搬して、体の中をきれいに する役目を担っています。
この流れが悪くなると、細胞内に老廃物が溜まり、コリやむくみの原因となってしまうのです。

リンパの流れを滞らせる最大の原因は、血液の循環が悪化すること。
血管の収縮や筋肉の緊張が長く続くことで、リンパは流れにくくなります。
このとき、リンパの流れを調整することで、老廃物がきちんと処理されると、血液の流れも良くなり、勃起力も高まっていくというわけです。

もちろん、リンパ管自体にも、適切な圧力がかからないと流れが悪くなります。
運動やマッサージで、リンパの流れを良くして、全身の不調を改善していきましょう。
疲れが溜まる、体が重いといった精力減退につながる症状も、リンパの流れをスムーズにすることで解消されていきます。

では、具体的なマッサージ方法をご説明していきましょう。

❶膝の上から足の付け根の鼠径(そけい)リンパ節に向かって流すようにマッサージしていきます。
腿を両手でつかむようにして、親指で皮膚のみを圧するように刺激していく位の力加減にしてください。
リンパ節は、不要な老廃物や病原体などをろ過して、リンパ液をきれいにする大切な部分です。
ここにしっかりリンパの流れをつけるようにしましょう。

❷脚の付け根にある鼠径リンパ節に、親指以外の4本の指を差し込むように当てて、そのまま引き上げるイメージでリンパを上へ流していきましょう。
ここは、気衝というツボがあり、体の血を集め、調整する経絡でもあります。
Vライン沿って指を当て、ドクンドクンと脈拍を感じる部分を探してください。
人差し指~薬指の3本を使って、3秒ほどやさしく押しては離すを10回程度繰り返します。

❸次は、男性ホルモンの分泌を促す下腹部のツボ、横骨(おうこつ)と大赫(だいかく)への刺激です。横骨は、恥骨の上縁中央から左右5㎜の場所にあり、大赫は、横骨から上1㎝の部分にあります。横骨→大赫の順に、人差し指と中指の二本で痛くない力加減で刺激。3秒押して離すを5回ずつ、計4ヵ所で行なってください。

❹最後のツボは気穴(きけつ)。下半身の血と気の巡りを改善するツボです。
大赫から上1㎝の部分にあります。
ここを、人差し指と中指の二本で痛くない力加減で刺激し(3秒押して離すを5回ずつ、計2ヵ所)、最後に、横骨→大赫→気穴の順に、左右2本のラインを流してあげましょう。

❺仕上げは三本指を使い、お腹の横から鼠径リンパ節に向かって、図のように流していってください。

マッサージの途中、体がポカポカ、リラックスして、自然に勃起していることもあるかもしれません。変に意識せず、体の反応にまかせてOKです。

実践に関しては、下記の注意点を守ってください。


●ツボにはきちんとつながりがあって、単独の刺激や順番通りでない刺激では、十分な効果が得られないので、必ず手順どおりに行なってください。

●食後2時間と飲酒後のマッサージは避けてください。

●ズボンは脱いでください。下着をつけていても裸でもOK。リラックスできる格好で行ってください。

●皮膚に怪我や湿疹があるときは、細菌がリンパを介して広がる恐れがあるので避けてください。

●風俗店などで精力増強を謳ったリンパマッサージを提供しているところもありますが、リンパと血液の流れを整え、体のバランスを整えることを目的として本項のマッサージとは趣旨が違うとご理解ください。ここでご紹介したのは、フランスでリンパドレナージュという理学療法の一貫として取り入れられている、信頼できる方法です。


パートナーと自然な形で、性的コミュニケーションをとることもできる方法として、セックスレスのカップルにもお勧めと言えるでしょう。


先生の豆知識コラム

川上智史

北里大学院医療系研究科医学
専攻博士過程修了医学博士

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