愛し合う機会の多いカップルほど妊娠しやすい

男性編

「子づくり」にこだわらないセックスのすすめ

●愛し合う機会の多いカップルほど妊娠しやすい

ここまで、さまざまな角度から、「男性不妊解消」を目的とした体質改善法をご紹介してきました。
しかし、あなただけがどんなに努力しても、最後にはパートナーの力を得なければ、赤ちゃんを授かることはできません。
愛するパートナーと抱き合い、健康な精子と卵子が出会って女性の子宮に着床することで、はじめて新しい命が誕生するのです。

子どもを授かろうと思うとき、妊娠の確率を高めようと、女性の排卵時期に合わせて性行為を行なう「タイミング法」を行なっているカップルも多いかもしれません。
確かに、これはわざわざ病院へ行かなくても、自分たちでできる不妊解消への努力として、一定の効果は期待できます。

ただ、その一方で自己流で行なう「タイミング法」は、成果の上がりやすい人と上がりにくい人の差が大きいのも事実です。
基本的に、自己流タイミング法が向くのは、「月経が規則的な女性」がパートナーである場合。
基礎体温をつけて、低温期と高温期がはっきり分かれる女性なら、「排卵時期」の予測が立てやすく、セックスのタイミングもはかりやすからです。

しかし、月経不順の女性や基礎体温のグラフが低温期と高温期に分かれていない場合は、残念ながら、思うような効果が得られない可能性のほうが高いでしょう。
というのも、女性の月経リズムがアンバランスであるということは、体に何らかの「不妊要素」を抱えていることが考えられるからです。

まずは、女性の体の状態を、妊娠向きに改善することを優先し、それからタイミング法に臨んでみてください。(女性の体質改善については、「●●」をご参照ください)

さて、「排卵」と「セックス」の関係についてですが、不妊に悩むカップルに聞いてみると、意外と正しく理解されていないことに驚かされます。
多くの人は「排卵日」を狙ってセックスをすると妊娠しやすいと思っているようですが、残念ながら「基礎体温」だけでは「排卵日」を特定することは難しいですし、「排卵日」だけを狙ってセックスをしても、妊娠の確率は高まりません。

では、いつセックスをするのがベストタイミングなのか?正解は……、
排卵日前の1~3日間がもっとも妊娠しやすいタイミングなのです。

これは、卵子と精子の「寿命の差」から計算して導き出した数字です。
卵子は、排卵後半日~24時間、精子は射精後女性の体内で平均4~7日は生きると言われています。
しかも、射精された精子はすぐには卵子に向かって行かず、いったん子宮頸管粘液の中に蓄えられて、持続的に卵管に送り出されます。
この時間差を考えると、「排卵日当日」よりも、「排卵日前」にセックスを行うほうが妊娠確率の高まることがわかるでしょう。

ですから、医学的な数字の上からは、「排卵日当日」にこだわらず、排卵前5日間くらいの間を狙って、性交回数を増やすようにしてみると、受精の確率が高まると言えるわけです。

とはいえ、科学的なデータ通りにはいかないのが、人間という生き物の複雑なところ。特に、男性はナイーブですから、「セックスするならこの期間に!」と指定されると、プレッシャーがかかって、うまく勃起や射精ができないケースが多々あります。
ただでさえ、セックスに不安を抱えているのなら、排卵日前をことさら意識することは、逆効果になる可能性もあります。

そんなあなたに知ってもらいたいのが、次のデータ。
「性交の頻度」と「妊娠」の関係を調べたその調査によると、毎日性交しているカップルの妊娠確率は37%、1日おきは33%であるのに対し、週1回になると15%にまで低下してしまうそうです。
つまり、1ヵ月のある時期だけ、子づくり目的でセックスするよりも、子づくりを抜きにしても頻繁に愛し合うカップルのほうが、赤ちゃんを授かりやすいという傾向があるのです。

不妊治療の現場でも、普段はまったく夫婦で触れ合うことがなく、女性の排卵期だけセックスをするカップルというのは、「妊娠確率が低い」という報告があります。
極端な話、「月に1回排卵期だけ」のセックスは、うまくいくのが逆に奇跡的で、ワンタイムのチャンスとなると、やはり確率はどうしても下がってしまうのでしょう。
男性は、射精回数が減ると、精子の質が下がる傾向にあることも関係するのかもしれません。

お互い忙しく生活のリズムが合わない、セックスに対して自信が持てない、結婚生活も長くなってセックスの回数が減ってきている・・・…などの事情はあるかもしれません。
しかし、赤ちゃんを望むなら、なるべく普段から夫婦のスキンシップをはかり、自然にセックスできるような雰囲気づくりをしておくことが大切と言えます。

4章でご紹介したマッサージをパートナーにしてもらったり、あなたがパートナーに「いつもありがとう。お疲れ様」と、日々の感謝を込めてマッサージしてあげるのも良いでしょう。
足裏マッサージや下半身リンパマッサージは、女性の生殖機能を高めるのにも有効です。

相手の体に触れるというのは、実にわかりやすい愛情表現でもあります。
言葉で「愛している」と伝えるよりも照れくさくなく、気持ちよくもなれるスキンシップを活用しない手はありません。
不妊解消のためと肩肘はらず、お互いの肌のぬくもりを感じあいながら、セクシャルな雰囲気を高めていけ ば、自然にセックスの回数も増えていくことでしょう。


先生の豆知識コラム

川上智史

北里大学院医療系研究科医学
専攻博士過程修了医学博士

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