「いつかは赤ちゃんを身ごもって、出産をする」というふうに、主体的に妊娠・出産に関わる女性に比べて、男性は生殖のしくみについて、やや無頓着なところがあるようです。
女性は健康な赤ちゃんを身ごもるために、そして妊娠期間を良好に過ごし、無事に出産・子育てをしていけるように、自分の体をしっかり管理していかなければという自覚を持って、それを実践していきます。
しかし、女性側のこうした努力も、男性の意識が低ければ報われません。
そもそも健康な「精子」がなければ、そして「性交」というプロセスを経なければ、妊娠は成立しないからです。赤ちゃんを望むなら、男性も自分にできる「健康管理」を積極的にしていく必要があります。そのためにも、まずは自分の体を知ることから始めましょう。
さて、妊娠の要となるのは「精子」です。精子が精巣で作られることはご存知のとおりだと思いますが、では、「精子」が作られるまでには何日位かかるか知っていますか?
答えは、約80日。つまり、今、あなたが射精した精液の中の精子は、2ヵ月半ほど前の細胞がもとになって作られたものなのです。このことから、精液検査などで出てくる数値は、1~2ヵ月前くらいの体調の影響を受けていると推測できるでしょう。
初回の精液所見の結果が悪くても、2ヵ月ほど体質改善の努力をすると、かなり結果は違ってくる可能性があります。
さらに詳しく、精子誕生までのプロセスを見ていきましょう。
精子のもとになる精祖細胞は、精巣の中にある精細管の中で細胞分裂を繰り返します。
精祖細胞→精母細胞→精子細胞→精子にまで成長すると、精細管の中を進んで精巣上体に入ります。ここで10~20日間くらい精子を蓄えて成熟させ、泳ぐ力や卵子に侵入する力をつけるのです。
WHO(世界保健機構)の調査による不妊要因の割合 | ||
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陰茎 |
ちなみに、射精回数が少ないため、古くなった精子の分解もここで行なれ、体内に吸収されたり、尿と一緒に排出されたりします。
過剰な精子を捨てるために定期的に射精しなければいけないと言うのは単なる俗説で、このようにきちんと自己処理されているのです。(ただし、射精回数が少なくなることへの弊害はあるのでご注意ください!)
さて、80日間かけて作られた精子は、精巣上体で射精を待ちます。
脳からの指令で射精反応が伝わってくると、精子は精管を通っていき、精嚢や前立腺の分泌液と合流して、体外に出て行くわけです。
まだよくわかっていない点もあるのですが、射精後すぐの精子は受精能力がなく、子宮の中を泳いでいくことによって受精能力を獲得していくとされています。
射精後およそ5~6時間すると受精能力が芽生え、それから平均4~5日は生きるというのが目安です。
ただし、すべてが活きのいい精子とは限りません。受精能力も時間とともに低下します。
一説には、36時間程度で受精能力が弱くなるとも言われていますから、女性の排卵日前後に、セックスの頻度を増やすことが、受精の確率を高めるということは、十分おわかりいただけるでしょう。
なにしろ、卵子にいたっては、たった1日しか生きられないのです。
精子は、女性の体の中の子宮頸管→子宮→卵管へと進むまでに次々と脱落し、卵管までたどり着ける精子はたったの数十~数百となっています。
その中のたった1個が、卵子の中に入り込むことができれば、めでたく受精ということになるわけです。
このように具体的な数字を挙げながらプロセスを辿っていくと、「妊娠」とは実はかなり奇跡的に成立した現象だとおわかりいただけるでしょう。
その確率を少しでも上げるために、質の良い「精子」をたくさん作る体づくりをするのが、妊娠におけるあなたの務めなのです。
もちろん、精子だけが良くてもダメ。
最終的に受精するパートナーの子宮や卵子の状態が良くなければ、せっかくの質の良い精子も無駄になってしまう可能性があります。
健やかな赤ちゃんを授かるために、是非、ご夫婦二人三脚で、赤ちゃんを授かるのにふさわしい体づくりを心がけていってください。
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