カロリーを基準にした食品選びの落とし穴

女性編

「妊娠力」をアップするこんな食べ方

●カロリーを基準にした食品選びの落とし穴

食事というと、女性はまず「カロリー」を気にします。
いえ、女性ばかりでなく、メタボリックシンドロームを気にする中年男性もカロリーを無視できません。巷のレストランやお弁当にはカロリー表示のあるのが当たり前になってくるなど、健康をとらえる指標として「カロリー」にばかり注目が集まっています。しかし、妊娠を望むならこの「カロリー偏重主義」は落とし穴となります。

普段の生活スタイルや体型によって個人差はありますが、20代~40代の女性の1日の平均摂取カロリーは1700~1800kcalと言われています。でも、目先の数字に惑わされてはいけません。重要なのは摂取カロリーの多い少ないではなく、内容なのだと認識を改めましょう。

たとえば、ダイエットをしようとカロリー制限をしたとします。肉やご飯を食べずに野菜ばかりを食べてカロリーを減らすと、その結果どうなるでしょうか。

カロリーが不足すると、体は自らの脂肪や筋肉中のたんぱく質を燃焼させてエネルギーをつくり出します。たんぱく質が燃焼すると、筋肉が落ちますから、見た目に細くなり、体重も減りますが、同時に妊娠にとって大切な子宮にも影響が出てきます。細胞をつくるもととなる体内のたんぱく質が欠乏することで、子宮もやせ細り、赤ちゃんが大好きなふかふかベッドがつくれなくなってしまうのです。

では、カロリーを十分摂っていると思われる、太り気味の人はどうかというと、こちらも栄養不足であるケースが少なくありません。

太りすぎでちょっとした運動でもすぐ息切れしてしまう人は、妊娠にとって大切な「鉄分」が不足している可能性があります。スナック菓子やコンビニのお菓子の食べすぎで体重オーバーしている人は、トランス脂肪酸というホルモンや子宮内膜をつくる脂質の働きを邪魔する有害物質を多く摂取して、妊娠しにくくなっている可能性もあるのです。

やせていても、太っていても、適切な栄養が体に行き渡っていないという点で、両者は共通しているのです。

妊娠中も体重管理は重要な項目となりますが、見た目の数字にとらわれるのではなく、必要な栄養を摂りながら、適正体重をキープすることを心がける必要があります。「カロリー」ではなく「栄養」をベースに普段の食事を考えていく習慣をつけていきましょう。

その目安となるのが「1汁3菜」という伝統的な日本の食事スタイルです。米などの穀物を「主食」に、魚や大豆などたんぱく源となる「主菜」、それに煮物などの「野菜」が添えられ、味噌汁と一緒に出される組み合わせをイメージしていただければ良いでしょう。

主食: 主菜: 副菜=3 : 1 : 2

大体、この比率で食べると、炭水化物、脂質、たんぱく質という体を構成する三大栄養素に由来するエネルギーの摂取割合が理想的パターンに近くなるとされています。一つの目安としてください。

ちなみに、「主食」は米のほかパンや麺類で主に炭水化物からのエネルギー供給を、「主菜」は魚や豆腐などの大豆製品のほか、肉や卵からの良質な脂質やたんぱく質の供給を、「副菜」は野菜や果物から「主食」「主菜」で補えない体の調子を整えるビタミン・ミネラル・食物繊維の供給を担います。また、バランスの良い食事をとるヒントとして、

●レインボーの食事
●孫はやさしい(マ・ゴ・ワ・ヤ・サ・シ・イ)

という2つの言葉を覚えておくのも良いでしょう。

「レインボーの食事」とは、文字通り7色取り揃えたカラフルな食事ということ。穀物やたんぱく質・脂質に偏った食事をしていると色彩に乏しくなります。
そんなときは、緑や赤や紫の野菜を加えたり、黄色や橙(オレンジ)のフルーツを意識的に摂ったりすることで、バランスを整えましょう。

「孫は優しい」は、豆類の「マ」、ゴマやナッツ類の「ゴ」、ワカメなどの海藻類の「ワ」、野菜の「ヤ」、魚の「サ」、しいたけなどキノコ類の「シ」、イモ類の「イ」の頭文字をつなげた言葉。どれも、外食に偏ると不足しがちな食品群です。
自炊する際は、これらをまんべんなく使った料理を心がけると、体の調子を整えるバランスの良い食事内容となるでしょう


先生の豆知識コラム

川上智史

北里大学院医療系研究科医学
専攻博士過程修了医学博士

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