なぜ、「男性不妊」が増えているのか？

●なぜ、「男性不妊」が増えているのか？

現在、統計上はおよそ８～10組に１組の夫婦が不妊症だというデータがあります。
晩婚化、仕事を持つ女性の出産時期の見合わせなどがその理由と考えられます。
医学の進歩によって、積極的に不妊治療を行うカップルが増えたことも、統計に上がってくる数字が増えた一因にあるかもしれません。

ともあれ、今の世の中にあって、「不妊症に悩む」ということは特別なことではなくなってきているのです。
芸能人が自身の不妊症を告白し、それをいかに乗り越えたかという手記を出版するなど、少しずつオープンに話せる状況も作られてきているのは、良いことだと思います。

さて、「はじめに」でも触れましたが、不妊症に悩むご夫婦のうち48%、実に半分近い割合を「男性側の要因（男女共に要因があるを含めて）」が占めるという事実を、もっと深刻に受け止めるべきです。

これまで、「不妊症」というと女性の病気と捉えられてきました。しかし、現実は、男女同じくらいの割合で「不妊症」である可能性があるのです。
特別に避妊しているわけではないのに、結婚して２年経っても赤ちゃんが産まれないという場合、医学的に「不妊」と定義されます。
これに当ては まるご夫婦は、男女共に「不妊症かもしれない」と疑ってみたほうがいいかもしれません。

ちなみに、男性不妊が増えているという見解がありますが、これを裏付ける明確なデータはありません。
しかし、いくつかそうであると推測できるデータは存在します。

慶應義塾大学が1948年からAID（非配偶者間人工授精）を実施し、ドナーとなる健康男性のデータを蓄積した結果がそれ。1970年～98年の間に、精子濃度は減少傾向を示していると発表しています。

また、ある報告によると、日本男性で勃起障害に悩む人は、最大推計値で950万人いると言われ、この数値は10年前の同じ手法による推計値から倍増しているそうです。

加えて、厚生労働科学研究所と家族計画協会が共同で実施した2004年の調査によると、セックスレスが増えていることが明らかです。
セックスレスとは、「決まったパートナーがいるにもかかわらず、セクシャルなコンタクトが1ヵ月以上なく、それが長期にわたることが予測される状態」と定義していますが、過去1ヶ月の間にセックスをしなかった既婚男性が、20歳代で21.6％、30歳代で29.9％にものぼっているのです。
ちなみに、同じ調査は未婚男性にも行なわれていますが、彼らにいたっては過去１ヶ月に１回もセックスなしが、40～50％も占めるという草食ぶり。

これら３つの調査結果を見ると、「男性不妊」が増えていることは想像に難くないでしょう。

●精子数の減少
●勃起障害（ED）の増加
●セックスレス

これらの背景として問題視されているのが、環境ホルモンの存在です。
1992年にデンマークで、「ヒトの精子は過去50年間に半減した」とし、その原因が環境ホルモンであるという衝撃的な仮説を発表したのが、そもそものきっかけです。

環境ホルモンとは、正しくは「内分泌かく乱(ないぶんぴつかくらん)化学物質」と呼ばれます。
人 間の体内で生成される女性ホルモンにとてもよく似ているため、体の中に取り込まれるとまるで本当のホルモンの様に作用し、本物のホルモンの働きを阻害したり邪魔をして体の成長や生殖・行動に関する働きまでもかく乱させてしまうのが問題視されているのです。

加工食品やシャンプー、サランラップなど身近な家庭用品に含まれている場合があるので、知らず知らずのうちに体内に取り込んでしまっている可能性が否定できません。

「男性不妊」への影響としては、女性ホルモン様作用を引き起こし、男性の生殖機能や性衝動を引き起こすホルモンである、テストステロン（男性ホルモン）の作用を抑制。
それにより、勃起障害や精子を作る造精機能などに障害が出てしまうと考えられているのです。

精子の質を下げるのは、環境ホルモンばかりではありません。
射精の回数が少ないことも、精子の質を下げることにつながります。
また、女性が精子を十分に生殖器内に取り込むには、深いオルガスムスが必要です。
勃起障害で、女性が十分に感じないままのセックスでは、精子が奥深くまで侵入せず、妊娠が成立しにくくなってしまう可能性が高くなります。

このように、３つの要因は、それぞれ単独ではなく、複雑に絡み合いながら、「男性不妊」の原因になっていると考えるべきでしょう。
一見、悪循環のように見えますが、出口がないわけではありません。
一つ一つの要因を改善ながら、「男性不妊」の解消を目指していきましょう。