不妊と向き合うとき、ご自身の中で、あるいはご夫婦の間で「性」や「子作り」に対する意識を再確認せざるを得ません。
ご夫婦といえども、「男」と「女」という違った「性」を持つお二人。
それぞれに、特有の本能や心理的側面を持っていることを理解することが、「不妊」を乗り越えていくには絶対的に重要となります。
愛するパートナーとの間に赤ちゃんを望む気持ちは、男女共通でも、男性の場合、「好きな女性を独占したい」「自分の遺伝子を持った子どもを、できるだけ多く、確実に残したい」という動物の雄としての本能が強くあります。
それなのに、検査で精子の状態が悪く、自分の遺伝子を残せない「男性不妊」と診断されたら……多くの方は男性としての矜持やプライドを崩されてしまうように感じるでしょう。
自分の力で、子どもを宿すということを通じて、相手の女性を独占することが叶わなくなるからです。
しかし、相手の女性からしてみれば、何もあなたの精子だけが欲しいわけではないのです。愛するパートナーと抱き合い、お互いの愛情を確かめ、自分の愛情を相手に伝え、心も体も満足した結果、赤ちゃんが授かれば最高だと考えているはずです。
男性だって、根本はこの考えに賛同でしょう。
セックスは子作りのためだけにあるわけではない。
しかし、子どもをつくるためには、精子と卵子が出会わなくてはならない。
2つの相反する気持ちの中で悩むことになります。
自然妊娠を望んでいても、「体の問題」でそれが難しいのであれば、ご夫婦二人で、より強く「子どもを持つことの意味」を再確認し、「子どもを持つための協力体制」を敷いていく必要があるのです。
男性の場合、女性の排卵時期に合わせて性交渉する「タイミング療法」や精液検査における「採精」など、自分たちのセックスに外部の力が働き、「義務」のような感覚を持ってしまうと、勃起しなくなってしまうなどデリケートな面があります。
また、自然妊娠にこだわるあまり、医学的な補助生殖医療(体外受精や顕微授精)に抵抗感を示すのも男性が多いのが現状です。
子どもを持つための不妊治療なのに、そのせいでセックスレスになってしまうようなら本末転倒です。
ご夫婦で協力しながら、セックスへの「義務感」や男性が抱いてしまった「コンプレックス」をやわらげる必要があるでしょう。
「子作り」に限定したセックスだけでなく、普段からスキンシップをはかったり、ロマンティックなムードを演出したりなど、いろいろやり方はあります。
できれば、女性から男性にこうしたさりげない働きかけがあると良いですね。
本サイトの「女性編」には、自然な形でスキンシップがはかれるペアマッサージの方法やセクシャルな気分を盛り上げるベッドルームの工夫なども載っていますので、興味のある方は参考にしてみてください。
一方、心因性が7~8割と言われる勃起障害は、心の不調がダイレクトに体に現れている例です。
ただ、この場合、あまり深刻に心の問題ばかりにフォーカスするのは、かえって病状を悪化させる危険もあります。
EDを引き起こすストレスには実は2つあって、1つが交感神経を活性化させ緊張状態をつくりだす「社会的ストレス」、もう1つが体内の活性酸素量が増えることによってペニスの血管状態が悪化し血流量が減ることによって勃起を妨げる「酸化ストレス」です。
後者については、食生活や運動といった「体をつくる側面」からペニスの状態を改善していくことが可能。
血管状態を良くする食事や運動は、もちろん全身の健康状態を改善していきます。
そして、全身の状態が良くなれば、自然に「社会的ストレス」への抵抗力も増し、心の問題も少しずつ軽くなっていくのです。
このように、「体」と「心」は両輪で、別々に切り離して考えるべきものではありません。
「病は気から」「健全な体に健全な魂が宿る」という昔からの言葉もあります。
どちらかで行き詰ったら、別の側面からアプローチしてみると、思いがけない事態の改善が見られるのではないでしょうか。
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